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先日行われた「ミクフェス'09(夏)」にマニピとして参加してまして、色々と面白かったので少し報告しますね。

結果報告だけしますと、主催も驚くほどの反響で問い合わせ殺到、ゲスト枠やVIPにも制限がかかるほどだったとか。平日夜の台風という悪条件の中、来場者2300人程度、ニコ生視聴者も2300人程度に書き込みも13万件(!)と5000人以上の方が観ていたようですね。会場の熱気はそれはもう凄まじかったです。
レポの方はこちらででも、参考にドウゾ。

http://ascii.jp/elem/000/000/456/456009/


では先ずあそこで何が起きていたのか、大枠のシステムを説明しますね。

事前にSEGAさんの方で各曲に合わせたミクのモーションキャプチャーをし、モーションデータの整理や間引き(音楽で言うところの手クオンタイズですね)された黒バックの動画があがってきます。これを映像演出さんが動画の状態で編集作業と演出に合わせたエフェクトなどを加えていき、尺に合わせた動画が完成します。

僕の仕事はここからですね。今回は「いわゆる」マニピでは無いんですけど(この辺りはあとで説明しますね)、プロデューサーさんやバンドさんが用意した打ち込みのパートを動画とシンクさせて走らせてました。
これを映像サイドさんの方に流し、プロジェクタで投影、それを特殊な透明パネルに映写して黒抜き部分が透明化されて映る、のような仕組みになっています。
映写技術に関しては専門家じゃナイので詳しくは分かりませんし聞いてません!ってか多分企業秘密なので知る由もありません!


・セッティング

事前に「これ使えそう?」と簡単な仕様を説明された某映像再生システムとPT、これにバックアップセットとしてPTをもう1セットで行きたいと言われました。

1) PTはMTCを2系統出せない
映像システムが落ちたら困るよね、ってことで完全独立な2セットを提案したところ、OKが出ました。とりあえずそこまではよしと。
普通に考えればMTCは映像分を出せばいいので1系統で問題ないのですが、バックアップシステムにも同じ信号を流せないとなると2セット同士はシンクしませんからこれはアウトですよね。

PT→映像【メイン】
(←ここがアウト)
PT→映像【バックアップ】

実際似たようなセッティングの現場でも原始的に右手と左手で同時にスタートボタンを押す、というような事があるみたいなのでリハで何度か試してみましたが、やはり手でやるとどれだけうまくやっても微妙~にズレるんですよね、それも音符レベル(64分とか)で酷い事に。一度失敗するとズレっぱなしなので3曲つながりになってるものなどはその後どの曲で落ちても駄目なので危険過ぎます。
それでもプロのドラマーさんなら気合いで立て直すのでしょうけど、ドラマーさんの力量に全てを預けるのは流石に無責任だと思うのでこれは却下ですね。
ってことで機材を増やすと問題の元にはなりますが、ここの対策は仕方なくMidiパッチベイ(I/Fではなく、古き良き方)で。

2) PTはシンクを外して自走出来ない
これも大きな欠点ですね。MTCを受けて同時スタートしたものの、メインが落ちた際にMTCの送信も止まるわけですから、自走出来なければ同時に停止するのでバックアップの意味を成しませんよね。再生後にバックアップ側の同期を切ったりMidiケーブルを抜くなどのハードテストをしたところ、やっぱりどれもアウトでした。
ここでLogic様の登場です。この子、このような場合でもちゃんと自走するんですよね。自走後は単純なオーディオシンクに戻るだけなのでその後もズレる事はまずありません。スタートでシンクミスが起きても再シンクし直せばいい事には代わり無いわけなので安全性も増します。更なる保険としてBigBenからクロックを同時に渡して。
再生中にソングを再ロードしても、立ち上がった瞬間にシンクして走り出す様はちょっと圧巻です。

3) バックアップをLogicにしたせいで作業二重苦
PTを2セットにする最大の恩恵は、後に説明します刻々と修正される大変なセッションデータをそのまま共有して使える点にあります。これが片方Logicに変わる事で、一箇所の修正で全部やり直しなんですね・・・。
さっと作ってすぐOKが出て、ヒマを見て本番までにソング作成+トラブルチェックリハくらいでも作業量が倍になって大変なんですが、全てがかつかつで動いているので、変更が一つ入ることで3倍、4倍の労力を強いられます。でも安全には代えられないので、、、もうここは仕方ないですね。


・音加工、セッション組

PAさんの方から予め8chの空きを指定されていましたので、PTHDでセッションデータを作成していきます。それを受けて、事前にクリックトラック込みで8ch以内にオケを纏めたものを各アーティストさんに提出して貰うよう通達して貰ったのですがやはり思い通りにはいかないもので(笑)、トラック数の多いオケ、クリックトラックが無かった、モノ・ステになってるトラックがあったりで、兎に角時間がないのでこちらでこれらを整理する作業から始めます。
VoとChoが既に2mixになってしまっているものはもうどうしようもないので(PAさん的には迷惑な話でしょうが、むしろこうやってアーティストさんが気に入ったバランスを尊重した方がいいのかな、とは思います)オリジナル曲が入ったCDを聞きながらリズム隊やロングトーン楽器、和声補完楽器、などなどのプライオリティをつけて簡単にまとめていきます。後で抜き差し指示やPAからバランス変更指示が来るかも知れないと思ったものに関しては、出来るだけデータをスリムにしてバウンスせずにアウト振りだけで処理しています。

ご存じの方も居るかと思いますが、ハウスで鳴らす際に主要楽器がPANされた状態になっていると、例えば右側のお客さんには五月蠅く、左のお客さんには聞こえない、となってしまうので、そうならないようモノ出力が基本となっています。ピロピロ鳴っているシーケンスが左右交互PANしたり、広がりのあるPADでステレオ感を出す、といったような場合はそのままでもいいのですが、、、こういった偏ったパンニングは放っておくと色々と問題が起きます。

1) PAさんが困る
作成意図は理解しても放置は出来ないので、仕方なく卓でセンターに寄せることになります。卓によってはパンローの問題で他パートと比べて意図しない音量差が出ちゃったりもしますよね。

2) 音がおかしくなる
モノステで固定された2mixのPANを下手に弄ると(エフェクトがかかっているなら尚更)位相が狂ってしまって手がつけられなくなります。ステージPAさんがモニタに返す際(勿論モノ)音がおかしくなって大変デス。

今回取った手段は、ステレオを強制解除、PAN振りされている側を残して音の小さい方を削除。強制モノファイルを作ってから元の意図に合わせた音変えを施します。例えばステレオギターで「壁」などを作っていた場合、ショートディレイでステレオを作り直し、音量を元のバランスに下げる、などといった具合ですね。センターモノでいけそうなものは真ん中に定位し直す、と言った具合です。

あとはパートバランスですかね。Supercellさんの曲で弦パートがあったのですが、バンドにはちゃんとカルテットが居るので本来は消していいところなのですが、バンドで演奏するとなるとどうしても人数感が足りなかったり、ピンマイクで音を拾って出し直す際に音量限界があるために負けてしまうので、どうしましょうかとRyoさんの方に相談したところ、後ろでウッスラと流すよう指示がありました。
ただ渡されていたのがレコーディングの際に使用したセッションファイルで卓ミックスされたセッションですから、帯域処理どころかフェーダーがユニティになっている状態のものなので、バランスの方も含めて僕の方で処理しちゃいます。打ち込みで音がドライすぎるので空間処理も施しました。


・音加工(2)Vo

ミーティングの際に渡されたステージセッティングを見てボーカルマイクが配置されていたので「なんでスタンド要るんですか!」って思わず突っ込んだのですが、数秒間が空いてから爆笑になりました。
それくらいバーチャルボーカルのバンドってのは誰もが不慣れで奇妙で、色々と大変なようでした。
中でも忘れられないのが、照明+音響でのリハをしている際、パネルに映るミクとチカチカ光るライト、しかしステージには誰もいない、という光景で、これは正直異様な光景でしたね・・・。

それはさておき、次は歌の音質ですね。初日のリハで聴いた際に「これはまずいな・・・」と思いました。
ミク曲を聴き慣れてくるとこんなもんかなあと流してしまいがちですが、ミクの声は所詮生成されたものなので、倍音構成が単純で耳につく感じがしますよね。これ、スピーカーやヘッドホンでもギリギリセーフ(かアウト・笑)なのに大音量で鳴らし、しかも2時間半もお客さんに聴かせ続ける事を考えると相当キツイものがあります。また、生バンドがあると音量感やパワーで負けてしまうので、Voパートとしては音量を上げなければならず、上げると耳が痛いわけで、、、とツボにハマってしまうので大変です。

なので僕の方で少し手を入れてみました。時間もないので全部は無理ですが、バンドさんのものを中心に多少聞きやすくなるように倍音を増やして多少なりとも自然に聞こえる小細工を施しています。
先ずはエキスパンダを使ってわざと倍音に乱れが出るよう崩してしまいます。これをアウトボードに突っ込んで(今回はSSL/4000GのEQとAPIのプリを使いました)サチュレーションさせます。サチュレーションされたところは当然波形が乱れて倍音が増えますからより自然な音に近づきますよね。これを再コンプ(ルネコンプ:オプト、ウォーム、ゲインピーク気味)、再リミッティング(1176、4つ押しレシオ、アタック早め、リリースビート依存、スレッショルド2~3db程度引っかかり)して、ゲートと合わせて痛いトランジェントを取りつつ、リミッタの入力調整で天井にも突っ込んで更になめらかにします。

勝手なことをするとアレなので、事前に仕込んだものと元のままのものを空き時間にPAさんと主催側に聴いて貰い、全員一致で加工済みの方が扱いやすくヌケもいい、耳が楽(笑)とのことでそのまま採用しました。
会場に来られていた方、少しは聴きやすかったでしょうか?


・クリック問題

これには相当悩まされました。
事前にクリックを貰っていたバンドさんでそのまま本番まで行ったところは問題ないのですが、困ったのはリハやゲネ、本番直前に「頭にあと4欲しい」「リタルダンドの部分にクリックつけて」「やっぱテンポが戻る前の部分全部に新テンポのクリックを8つ追加して」というような要望です。
普通に考えれば30秒もあれば出来る作業なのですが、ここで今回の難解なシステムが邪魔をします。

今回はあくまで編集された動画をベースにセッションデータ全部をリップシンクするように一括移動して並べているだけです。演出上、曲間にMCが入らないものに関してはその映像データが2曲、3曲分繋がっており、例え元の曲データにテンポ情報があったとしても合体前なら簡単に触れるものが、複数の別セッションが並んで一つのソングになってしまっている状態では、曲が時間軸ベースに変更されてしまっているため、この時点でテンポに関連する対処はどうしようもありません。一緒にテンポチェンジ情報を移行なんてしようものなら編集の際にとんでもないことになります。ってことでクリック波形のオーディオを切って力技で手で合わせるしかなくなるわけですね。
当然のことくDAWが触れるプロデューサーさん達からしてみれば「ユー、クリックくらいちょちょいと貼ればいいじゃん」「曲全部を後ろにズラせば頭に空白作れるじゃん、ユーそこにクリック入れちゃいなよ」(ジャニさん(c))という思いがあるのも当然だと思うので、まずはシステムの説明から始めて、やりたい事は分かるし「普通のソング」なら出来ることが今回は出来ないんですよ、、、ってのを一生懸命説明して、理解して貰えたらそのまま、それでも必要となったらもう無理にでもやるしかないので、リハ合間の時間と別日(他の諸々の追加対応も含め三日費やしました)を使って根性で作ります。波形の移動単位がフレームのみでなかった事だけが救いですね(だったらもう不可能でしたが・笑)。

次に曲頭を開けるくらいは簡単じゃないの?と言うのもあると思います、だけどこれもまた色々と難しいのです。なぜかを説明するには映像側のシステムを把握して頂かないと難しいのですが、直接の原因はMTCさんの日付越えです。
大抵においてオフセットを1分以上(要は前に空きを作って後ろに倒す)に設定しておくと思うのですが、諸々の事情と仕様とで0時0分開始を強いられていました。なので仮に1秒から曲が(映像が)始まるとして、これに8前からクリックを追加して下さいと言われると、前日の23時59分58秒などからのスタートすることになります。
メインセッションは自分自身が吐いてるMTC信号なのでそれでもいいのですが、バックアップ側の予備システムは「23時59分59秒29フレーム」までくるとこの日付を超えられずに、今日を飛び越して「明日の0時0分」に飛んでしまい、要はシンクが切れてしまいます。出来ないでは済まない、諦めたらそこで試合終了ですよって安西先生も言っている事ですし、セッション作成も実際の再生もその場凌ぎの力業で解決したのですが、基本的にはアウトな仕組みなんですね。

次に簡単そうなのは2曲目と3曲目の間、つまり3曲目の頭に足す、といったような場合ですね。
これも映像に同期している事で3曲目を後ろに倒すと言うことが出来ません。映像側でこの空白を開けるだけのために全曲分レンダーし直して貰うことになります、、、。
今回、どれくらい切羽詰まった状況だったかと言いますと、ゲネ当日の朝に映像データを貰って間に合うか(間に合わないか・笑)のところを、結局映像の方も直し直しのオンパレードを強いられていたようで遅れに遅れ、夕方に今すぐどうしても必要な分だけ頂いてその日のリハは臨時対応、レンダーも追いつかない状態なので現場にPC持ち込みまでして対応してらした様子なので、、、そんな中「クリックに頭をつけるためにこの3曲分全部やり直して下さい」なんて死んでも言えませんよね(笑)

そこで先ず頭に浮かぶのは、「全曲切っておく」ことですよね。これならテンポ情報を持ったままだし編集も自由自在、速対応可能なのですが、、、セッションを一つ立ち上げるだけならいいのですが、映像側も同じ操作が必要で、これがバックアップ含め2セット動いていますから4セット分を曲ごとに変更するのは時間がかかりすぎるために演出側でストップがかかりました(だから繋げることになったようですが)。なのでセッションやデータ変更していたのはMCなどが入って時間が稼げるところだけですね。
本当はクリックの音自体を変えて欲しいとか(上のことを理解して貰えたらこれが如何にマズイ状況かお分かりですよね・笑)、要望はまだまだあったのですが、もう多すぎて書くのが面倒くさいので!割愛します。
兎に角色々と大変でした。


てなわけで簡単に説明してみましたが如何だったでしょーか。

この他にもオープニングは僕の曲だったりして、これを作るのも大変だったんですが、、、

これはまた次回に。

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音楽屋さん
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作曲、プロデュースからエンジニアリングまで、曲が出来るまでの全ての工程をなんとなくそしてぼんやりとこなす人。ジャンルはポップス、ロックからダンスミュージックまでなんでもやります。最近はすっかりハウスの活動が中心になってマス。
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