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今回はfreedomのエレクトロリミックスについてお話しします。


先ずは今回のコンセプトのついてですね。

ここ数年のエレクトロのトレンドはフィジェットだったかと思うのですが、格好いいは格好いいんですが僕はこの手のサウンドは玄人過ぎて日本では絶対にウケないと感じてまして、一切手を出さずにきました。部分的に取り入れるにしてもどう付き合えばいいかもよく分らず、これといった方策もないままきました。
次にヨーロッパ全体を見渡してみると、同じエレクトロでもフランス、ドイツ、イギリスをはじめとしてそれぞれ曲調も異なっていて、2009年現在「コレ」と言える分かり易いトレンドもなく、上記フィジェットに至っては発祥や発展した国はそのどれでもないといった次第です。
サウンド傾向もかなり違います。イギリスは線が細くシンプルなサウンドが多く、ドイツは全レンジが詰まったファットなもの、フレンチは独特な上がり目の位置に音が詰まった近代ローファイな感じのもの、、、と様々ですね。勿論アーティストによって毛色が全然違いますから一概には言えませんが、総評するとそういった傾向のイメージを受けます。

さて、これを踏まえてどうしようかを考えました。
以前「I want U」でフレンチっぽいものをやってますからカブっちゃうのも面白くないと思いますし、今エレクトロで何をやりたいかと自問自答すると大してやりたい事もないなあというのが正直な感想で(笑
ってことで、試しに今まで自分が色々と聴いてきた中での不満点を挙げていきました。展開に乏しい、音が残念、などなど一旦リスト化してみて、同居出来るであろうサウンドを想像し、そこから「俺は今こういうのが聴きたいなあ」というのをイメージするところから始め、それらを元に、

・I want U と差別化を図る事
・フィジェットの本来の意味「忙しい、せわしない」を展開で表現
・それに伴って飽きさせない、コロコロ変わる展開、オドカシの要素を多く
・アレンジは最小限に、カットエディットや抜き差しを中心に遊ぶ
・比較的簡素な和音感、音数は多め、Bs兼リードの主役音を中心に
・但しベースは歪ませない方向で
・テクノ、ロック、ディスコの要素を同時に取り入れる
・迫って来るような、包まれているような極太サウンド
・それに伴う過剰コンプとサチュレーションサウンド、でも空間付けを

大雑把にはこんな感じでしょうか。

こういう曲はロックでいうところのリフの部分にあたるメインフレーズありきで考えていくため、主なコードワークを決めてから先ずはベースのフレーズを考えます。2通りくらいあれば十分かなと思ったので、とりあえず4パターン考えました。
次は音ですよね。リードも兼ねるため重要な要素の一つです。

予め考えておいたフレーズを簡単に打ち込み、鳴らしながらキーにフィットするようシンセサイズしていきます。「歪ませずにいわゆるぶりぶりベース」を使いたいので、歪んでいると感じさせる要素、つまり倍音配列がおかしくなったり乱れたりしている状態を作るため、シンセ側で工夫します。
今回はSynthEditで自作したシンセを使います。単純波形からシンプルな音色を作りたいとき用に用意してあるものなんですが、最近のバーチャルシンセは色々ゴテゴテ付きすぎていて簡単なものを作るときかえって使い難く感じるんですよね。GUIも凝っているがために何処に何があるか分かり難かったり、パラメータを弄るノブが小さ過ぎたり。
こういうときのためにすぐ触れる位置にNORDLEADを置いてあるのですが、如何せんハードであるばかりに事後処理の不便さがどうしてもつき纏うので、余計な機能は一切省いて自分で使いやすいよう工夫したシンプルなものです。

3osc構成ですので、oscのひとつを基本ラインの1oct下に回して音階感がギリギリ分かるような音を作り、基本線が分かり易いよう中心となる部分はノコギリに、この時点でそれなりに輪郭線は見えますからあとは強調させられるようスクエアとパルスを乗せてみて様子を見ます。ノッチがかかり、張りと胴で勝負する中抜けした音を想定していたので、ここで内蔵フィルタを試してみましたが思ったような効果が得られないので、EQを挟んでミッド切りで対処し、大体いけるかなと思ったところでポルタメメントとフィルタエンベローブ調整していきます。
次にオケとの馴染み調整用にもう一つレイヤーしておく音を作っておきます。馴染みと言えばリバーブをはじめとする空間EFXをかけるわけですが、今回はドライな音にしたいのでその矛盾する部分をレイヤーさせた音色で補います。リバーブと決定的に違うところは音そのものを変えられるところなので、輪郭を出しつつギラギラしたエッジを持たせて元音自体の線が消えないように(今回はVangardのAjaxsawを中心に)且つ元音に似た成分を混ぜて馴染みを作り、リリースは本音色よりも若干長め(リバーブ代用部分ですね)にしておき、この長さの部分は最終的に改めて調整します。

次は5度乗せ音です。ここは音楽的なこともあるのでかなり迷いました。フレーズを鳴らしながら音色やレベル調整をしていった結果、フレーズ面から考えて基本的にはやらない方向の方がいいなと思いました。ただBs兼リードなわけで和音感がかなり乏しくなりますから、そのせいで和音楽器を入れるのもいやなので、2oscで下にデジタルフィルタでジョリジョリ感を出して擬似的にパルスっぽくしたものを潜らせてメイン部分でノッチした箇所に太さの部分を加味するように設定し、上にスクエアを乗せて、この波形に5度の倍音が強調されて出るようにフィルタリングします。こうすることで部分レイヤーするであろうフレーズに5度感があるような無い様な、且つBs自体が太くなるような音が作れました。
この方法で、使い分けをするか片方に絞るかを後で考えられるよう2パターンの音色を組んでおきます。

そろそろベーシックを作らないと始まらないのでドラムを打ってみる事にします。
キックに関しては、丸いけど太い音が欲しかったのでいつもの事前仕込みライブラリを漁って適当なものをピックアップしてみました。ピッチをみてアタック感とリリースをチェックしながらEQ/コンプまで仕込んでおきます。Bsと仕事が被らないことを確認したら次はスネアですね。
今回はワリとミッドにコシがあって太め、ズバーン!とくるものが欲しかったので、レイヤーする方向で行く事にしました。ベースとなるのはリンドラと909とのレイヤーをSP1200に通したローファイな自前音色、もっと輪郭が欲しいので皮のテンション緩めのスナッピーを切った生スネア(音源はBSDです)を作り、それぞれピッチ調整を済ませたら一旦録音、ビットクラッシャーで8bit化してローファイに。それなりにリリースがあっていい感じに汚れました。
ローファイ化したことでハイが出てないので上に乗せるものを幾つか試したのですが、「ズッバーン!」の効果を得るためのテストとしてリバーブをかけつつ同時にコンプして遊んでみたものの思った効果にならないので、ハイ出しがてらにリバーブのかかった音自体をレイヤーした方が早くないかなと思い別の方法をとりました。

これは大学生時代によく使っていた手なんですが、先ず適当なスネア(メインとなる音に似つつも別種の倍音を持っているものがいいです)を選び、深めで太めのリバーブをかけて、フルウェットか2割程度までの原音を混ぜて録音してしまいます。これをサンプラーに並べて同時にトリガーしながら、アタックを原音に譲るように削り、リリースやディケイを調整しながら長さを決めます(調整次第で別倍音を持ったゲートスネアみたいなものが作れちゃいます)。
元々ハイが足りなかった事が発端だったので、その部分をカバーするようEQで調整し、ズバーン効果が強調されるようにコンプ、これをメインのスネアとレイヤーして馴染みを確認。その後の扱いが面倒なので、原音のリバーブ成分と偽リバーブ音を混ぜたものを一度録音し、一つのサンプルにしておきます。これでこの音色を切ればドライに、レイヤーすれば密度の濃いリバーブがかかった音色に変えられるという寸法ですね。
リバーブをかけた状態で位相の調整がてら横に広がりを作っておいたいのでダイナミックで広がりのある独特な音が完成しました。リリース部分はこの先に待っているマスター段階での過剰コンプを想定し、新たに押し込まれて長くなることを計算にいれ、実音のキレ部分を基準に長さを決定、実際に聞えるのはそれよりも若干短くしておきます。地味ですが後々効果の出る大事な作業ですね。

HHはシンプルな方がいいとおもったので3種選択し、いつでも切り替えられるように待機、裏4のパターンとその手前16も打つシェイカー兼用パターンの2種を先に作っておきます。
残りのパーカッションですが、シンプルなパターンを組んで音の調整です。
全体音を太い仕上がりにする際ローミッドの処理をどうするかが結構ポイントになってくるのですが、基本的に切ってしまった方がスッキリ聞える部分なので、逆に考えてあとの判断で出具合を調整出来るようにパーカッションの位置を落としてあえてこの部分を中心に纏めておきます。そうする事でアメリカ製なハウスっぽい独特な太いドラムトラックに仕上げる事が出来ます。

あとは個人的に「ゴミ処理」と読んでいる効果なのですが、適当なループを取り出してきてpHatmatikやIntaktなどの波形を分断処理出来るようなサンプラに放り込み、16や32分に切られた部分を幾つか抽出してリズムの空白部分に埋め込み、擬似的な厚みを出していきます。これが特に効果を発揮するのは過剰コンプをかけた曲やドラムを使うときで、今回はそう言ったサウンドにする事が決まってますから丁寧に処理していきます。元音を過剰ゲート/コンプでシャックリさせてから隙間に埋め込むのも手ですね。

リズム楽器が揃ったところでドラムパターンを3パターンほど打っておきます。一旦全部をキックと同じコンプに仕込んでみて潰し具合と占有帯域を確認しながらBsと混ぜて喧嘩しないかを確認します。この時点でいい感じで馴染んではいたのですが、ドラムがまだ想定していた太さを出せていません。エキスパンダで量感調整もしたのですが、方向性の違う感じになったので、生ドラムの量感処理を応用して対処します。


今回は小技を幾つかお話ししているので、折角ですからこの部分もお話しして置こうかなとおもいます。
僕がやっている生ドラムの飽和調整のやり方なのですが、例えば一旦全楽器のマイク処理(かぶりのEQ処理など)が終わってドラム用バスでコンプ調整した後、それぞれの楽器のauxを別バスに立ち上げます。
キックなどは小さめに(これはただでさえ原音の方のキックの倍音を増やすために卓のゲインで歪ませていることが多いので更にゴチャっとさせ易いからです)、逆にオーバーヘッドなどの全体音が入っているものを大きめに設定し、サチュレーションが起こる程の過剰なコンプをかけます。これにチューブ歪みなどを加えていき、ミッドからローミッドが飽和したような部分を作りながら、最終的にEQでメインのドラムに足りない部分を残して不必要箇所を思いっきりカットしていきます。それでも量感が足りないようならコンプの手前段に初期反射音だけを残したリバーブを入れみたり、マルチバンドコンプを挟んでミッドのエキスパンダを調整するだけでワリと簡単に量感が増えます。

ここで注意すべき点は一つだけで、過剰コンプした事で消えてしまったアタック感なんですね。そのまま混ぜると、「よく分離したメイン音+なんだがゴワーとした物体」にしか聞えないので馴染ませるための処理をするのですが、ここはf特的に調整していくのではなく、トランジェントを操作します。キックの張りの部分はメインの方に残っている事が多いので、強調した上でその下に潜り込ませて「アタック自体に量感がるように」調整します、これはスネアも同じです。HHはむしろ逆で削る方向、リリース部分のみに量感を出してあげます。これには沢山理由があるのですが、一番は定位の問題ですかね。HHである以上なにがしかのPAN処理をしている事が殆どでそれを邪魔しかねないための対策です。原音にショートディレイを仕込んで両側で聞えるようにしたのに、位相の兼ね合いでセンターから消えてしまったり量感が大きく聞えてしまったりで。
位相の話が出ましたが、この状態でまだ馴染みが悪いようならメインパート側の各楽器の位相を反転させたり戻したり、サンプルディレイ的なものを挟んでみたりしながら様子を見ていくと尚良くなると思います。

とこれが自分のセオリーなのですが、今回は生ドラムではないので元音操作は自由自在、処理はラクチンです。量感処理音が出来たらそのBUS音を元音のコンプに参加させてみて、出来上がりです。BUS戻しが面倒だったり扱いが大変なら一度書き出して別波形に纏めておくのもいいですね。


あとは全体的に他の楽器を考えていくと、Bsやボーカル、シーケンスを筆頭に乾いた音に仕上げたい音ばかりでオケが構成されてしまいます。ただでさえコンプを過剰にしてダイナミクスも死にますし、量感とのトレードオフで空間を失います。なのでドラムで出来るだけ空間や奥行きを感じられるようにアンビエンスを調整してし、混ぜた状態である程度空間を感じられるようにします。今回はスネアとパーカッションにこの担当をして貰いました。


全体のアレンジが見えてきたら兎に角必要だと思うフレーズをさっさと打ってしまい、早めに一区切りつけてもう触れないように録音しちゃいます。これはカットで仕掛けを作るのが楽になるためと、それがアレンジの一部分でもあるので、いつでも取り返しがつく状態にしておくとキリがなくなってしまい、どうしても引き返そうとしてしまうので自分に縛りをつけてしまいます。
ドラム、ボーカル、必要なパート数種類と出来上がったので、展開を考えながら並べ、思いついた先からどんどんフィルを作りつつ切れ端パーツを作っていきます。
この際にオーディオ処理が必要なものは作ってしまう、アリモノのサンプルを混ぜる、全体として整理する、という作業も同時進行です。

並べていくうちに全貌が見えてきたのでそれに沿って地味な作業(キメ系の効果音を作ったり、シンバルなどの後付け音追加、ボーカル処理等々)をし、サビベースの後半パート部分も切り貼り編集、で次はギターの録音です。
8級レベルな僕のギターで適当に録音、演奏補修編集、フレーズ化してこれもオーディオに。ハイブリッドにするために、弾くのが面倒だったり弾けないフレーズなどを打ち込みギターで。この辺りで使ったエフェクトはAmpFarmとAmplitubeを使い分けています。


今回はあまりアレンジの話をしてませんが、単純に深く考えたところが無いんですよね(笑 切り貼りと構成決めで勝負したかったのもあるのですが、考えすぎたりアンサンブルが綺麗すぎると漢らしさが損なわれていくので全体としての勢いが死にますし、Bs兼リードを使っているせいで和音感は元々も乏しい事も理由の一つですね。
一つ挙げるとすると、最後の最後で少し出てくる大サビの部分でしょうか。ここは基本的にVI→I→Vの動きなんですが、パワーコードでIII→V→IIを弾いておく事で本来のBs進行を5度で保つようになります。下に回しているためにどちらのラインもベースに聞こえるよう錯覚し、たったこれだけでもう説得力が出ちゃうので、これがバンドサウンドギターの面白いところですねえ。


という感じで今回は終了です。musieには2番部分に当たるところしか上がっていませんが、大体の感じは分かって頂けると思います。フルサイズで聞かれる機会がありましたら、ガンガン変化しながらジワジワとアガっていく感覚を楽しんで貰えたらなあと思います。

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作曲、プロデュースからエンジニアリングまで、曲が出来るまでの全ての工程をなんとなくそしてぼんやりとこなす人。ジャンルはポップス、ロックからダンスミュージックまでなんでもやります。最近はすっかりハウスの活動が中心になってマス。
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