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今回はReasonの原曲のお話です。

もうかれこれ3年近く前になりますか、元々原曲と呼べるものはこのバージョンでメモ的に作って放置しておいたものを今回仕上げてしまいました。特筆するような事はしていないので今回は内容が薄くなりそうな事はこの時点で想像出来てしまうんですが(笑 とりあえず何か書いていきたいと思います。

いつもそうなんですが、曲に取りかかる前にどういう場面で聴くような曲か、目を瞑ってその曲を聴くと見える絵はどんなか、っていうのを意識しています。「休みの日にオープンカーでドライブするときにアガる曲」「爽やかな風が吹く丘が見える曲」、といった具合ですね。
今回は「夜帰宅するとき、電車の窓から外を見ながら聴きたくなるような曲」という感じにしたかったので、これに沿って作っていきます。


ゆったりと聴く曲なのでアレンジから見ていきましょう。
あまりに前の話なので何を考えてこの進行にしたのか全然覚えてないですが、シンプルに、メロが引き立つように、それなりにポップで聴きやすく、それでいてアガり過ぎないように、と言うコンセプトだった気がします。途中で悩んだ箇所はどの程度ブラック感を残すか、っていう部分だったかな?あまりブラック過ぎてしまうと日本人の好みに合いにくいかな、という懸念があるからですね。
今回手直しと残りを作るに辺り変更などをした部分は些細な部分だけですね、例えば素直にVで終わるのか、IVm/Vにするのか、9thは必要?などなど、その程度でした。

アレンジに当たっては、これだけお国柄を色濃く感じさせたり、今回のようにそれを加減する大事な部分という事もあって、一番気を遣うのは1にも2にもフレーズの部分でした。曲調に合うかなと思うフレーズをとりあえず作ってからそれに合わせてボイシングを考えて埋めていく、という方向ですね。はじめにエレピをバーンと弾いてしまうとコード感が強くなりすぎてそれだけでオケを埋めてしまって完結しかねないので先ずはガイド用のベーシックなドラムを適当に打って、ギターから手をつけ始めます。最初はガットのフィンガー弾きが合うかなと思っていたフレーズも、実際に使ってみるともっと張りが欲しくなったのでアコギに変更しました。


ざっとワンハーフ分のフレーズを作りながら簡単な和声付けが決まってきたら、展開に沿ったオケの厚みを考えながら他の楽器も入れていきます。先に少し書きましたがBメロでは少し変化が欲しかったので音色にも変化が反映するように弦のピッチカートとハープを試しながらあのフレーズを考えました。まだ殆ど楽器が入っていないものの、ちょっとやり過ぎたかなと思ったので、この見せ方は2番のエクスクルーシブに回してその手前のAを少し寂しめに落とし込む事で馴染みを作り、1番はAと同じ進行とフレーズのまま突っ切ってしまう方向に決めました。単純に2回しだと飽きてしまうので、この方法で1番はそのまま、2番はワリと動くパターン、と変化をつけました。
本当はダラーっと行ってしまうシンプルなアレンジの方が「っぽい」んですよね、ただメロの変化が少なくシンプルな作りなので、アレンジの方で少し変化を持たせないと飽きさせてしまうかなと思って妥協点を取りました。日本人的にはA/B/サビ構成な曲の馴染みが深いせいか味気なく感じてしまうからでしょうか。


次はサビなんですが、取るかかる前にドラムを決めてしまいます。
サビの厚みをどの程度にするかを考え、それを踏まえてその手前のA/Bを調整するので、見比べるに当たってドラムの五月蠅さ加減が作用してしまう事が一つ。もう一つはどうノルかでフレーズに影響が出るので、曲の持つリズム感を自分の中で整理する意味もあります。
音色ですが、全体のサウンドを考えると綺麗なだけで終わるのは嫌だなあという思いがありました。綺麗に聞けるけど、どこか尖っている、その両方の要素で包み込んでくるような音、と考えてアンサンブルをイメージしていくとドラムは全部歪んでてもいいなあと思いました。「どこか尖っている」の部分は、コンセプトに照らし合わせると「今置き去りにしていった雑踏」の部分ですかね。逆に綺麗にまとめる部分は「向かっている家などの落ち着ける先」を指すのでしょうか。

キックは生とエレドラ音色でレンジが広いものを二つ選び、ピッチを整えてから思い切って歪ませます。ここで大事なのはアタックの張りと優しめの胴、抜け切るブーミーなお尻部分です。そのイメージになるようにレイヤーのブレンドを調整しながらエレドラの方だけキャラ作りの一貫でコンプ、2つ纏めてディストーション処理をしてから倍音を揃えるためにコンプし直します。
スネアはパショッ!っていうタイプかタイミングの乱れたクラップかで悩みましたが、シャッフル感で遊べそうなので後者を取ります。3種使い、2つはレイヤーに、1つは裏打ち用に使っています。これも仕上げに歪ませます。
ハットは胴強調するタイプの生系のものとハイ補助をするものの2種使っています。生の方をディストーションさせてミッドにエッジを出しつつ五月蠅さを加算します。
決め起きのパターンを組むのでシャッフルタイミングを中心に慎重に考えながら組んでいきます。

準備は完了したのでサビに取りかかります。ギターはもう出来上がっているので、これを邪魔せず絡んだ上で足りない和声感を補うために今回はローズMk1を敷きます。
トップでカウンターを作るんですが、補助リードとの兼ね合いを見ながら。量感に関しては楽器を増やさずエレピのf特で解決する方法を取ります。いい感じで響いてきたので一応ここまでは完成とします。

で、最後にようやくベースです。最後まで取ってあったのには理由があるんですが、こういうジャンルの場合は大きく分けてコードチェンジ部分でルートを押さえるだけのベタなパターンと、かなり動きがあって遊んでるパターンの2通りで考えるんですが、後者をとるにしてもフレーズが揃っていない時点でそれをやると自由すぎて不必要にカウンターが増えてしまい、他の楽器を大人しく纏めてしまって活きてこないので、その間を取って加減し易いためにも最後に残してありました。ルートだけ押さえる感じでもなく、忘れた頃に少し大胆に動く、でも控え目な感じで、という位置づけと役割で考えていきます。
サビが完成しました、なのであとはこれを踏まえてA/Bパートに戻ります。


アコギがフレーズを歌っている事でコード感が足りないので、和声を補う程度にガットギターでシンプルなパターンを弾きます。上を使いすぎるとフレーズを邪魔しますし、下過ぎてもパワフルすぎ、音数が多くても倍音が増大するので、オープンからみて1段だけ上のハイコードを意識して1弦と6弦をミュートして中4弦だけ使います。大人しく聴いて欲しいパートなのでBsもベーシックに大人しめに、ですね。

Bsの音色の話を忘れてましたね。最初は久々にSE-1に電源を入れてサインを中心にただ太いだけ、音階感の少ないロー成分たっぷりな音を使っていたんですが、曲の中程に差し掛かったところでキックとの兼ね合いを考えるとロー処理が大変だなと思った事と、遊んで上に逃げた際にリードと似た音でぶつかってしまうために面白くないのでノコギリを中心に使ったMoogとスクエアはSH101に変えました。全体で考えると2oct程度動くので、音階としてもf特としてもレンジを広く使ったときにそれほど音の太さにバラつきがないように倍音が多い音の方がいいなという判断です。
大雑把にコンプしてから音を作りましたが、ディチューンを一生懸命調整したくらいで大した処理はしていません。oscの一つはサインのままにしてあるのですが、ローは広がりを作る事でオケに包まれる感覚の一部を作り出せるので、音が出来上がったら120Hz以下の左右の位相を狂わせて横に広げました。エアーで鳴らすとこれくらいのローなら指向性が狂って定位感は死ぬので勝手に拡がって聞えるのですが、コンセプトに乗っ取るとヘッドホンでもそれを感じて欲しいのでそのための処置でもあります。


全体を通してはそうですね、曲調が曲調なのでその中で荒さを感じる部分が欲しかったので音処理もフレーズの方でも少しだけ小細工を施しました、くらいですかね。シンプルにさっと仕上げた方がいい気がして実際かなり短時間で作ったのですが、出来るだけ生っぽさと言いますかルーズな部分を残すようにしました。音に関しても同じで、結構乱暴で大雑把な処理のまま終わっているところが多いです。気分の問題が殆どだと思うんですけど、こういうのを丁寧にするとココも丁寧に、だったらここも合わないのでまた丁寧に、、、と小さな発端から結局全体が上品に仕上がってしまうので、少し思い切ったくらいのルーズな部分は必要かなと思っています。


では今回はこの辺で。次回は多分ロックバラードな曲になると思います、お楽しみにー。

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今回はfreedomのエレクトロリミックスについてお話しします。


先ずは今回のコンセプトのついてですね。

ここ数年のエレクトロのトレンドはフィジェットだったかと思うのですが、格好いいは格好いいんですが僕はこの手のサウンドは玄人過ぎて日本では絶対にウケないと感じてまして、一切手を出さずにきました。部分的に取り入れるにしてもどう付き合えばいいかもよく分らず、これといった方策もないままきました。
次にヨーロッパ全体を見渡してみると、同じエレクトロでもフランス、ドイツ、イギリスをはじめとしてそれぞれ曲調も異なっていて、2009年現在「コレ」と言える分かり易いトレンドもなく、上記フィジェットに至っては発祥や発展した国はそのどれでもないといった次第です。
サウンド傾向もかなり違います。イギリスは線が細くシンプルなサウンドが多く、ドイツは全レンジが詰まったファットなもの、フレンチは独特な上がり目の位置に音が詰まった近代ローファイな感じのもの、、、と様々ですね。勿論アーティストによって毛色が全然違いますから一概には言えませんが、総評するとそういった傾向のイメージを受けます。

さて、これを踏まえてどうしようかを考えました。
以前「I want U」でフレンチっぽいものをやってますからカブっちゃうのも面白くないと思いますし、今エレクトロで何をやりたいかと自問自答すると大してやりたい事もないなあというのが正直な感想で(笑
ってことで、試しに今まで自分が色々と聴いてきた中での不満点を挙げていきました。展開に乏しい、音が残念、などなど一旦リスト化してみて、同居出来るであろうサウンドを想像し、そこから「俺は今こういうのが聴きたいなあ」というのをイメージするところから始め、それらを元に、

・I want U と差別化を図る事
・フィジェットの本来の意味「忙しい、せわしない」を展開で表現
・それに伴って飽きさせない、コロコロ変わる展開、オドカシの要素を多く
・アレンジは最小限に、カットエディットや抜き差しを中心に遊ぶ
・比較的簡素な和音感、音数は多め、Bs兼リードの主役音を中心に
・但しベースは歪ませない方向で
・テクノ、ロック、ディスコの要素を同時に取り入れる
・迫って来るような、包まれているような極太サウンド
・それに伴う過剰コンプとサチュレーションサウンド、でも空間付けを

大雑把にはこんな感じでしょうか。

こういう曲はロックでいうところのリフの部分にあたるメインフレーズありきで考えていくため、主なコードワークを決めてから先ずはベースのフレーズを考えます。2通りくらいあれば十分かなと思ったので、とりあえず4パターン考えました。
次は音ですよね。リードも兼ねるため重要な要素の一つです。

予め考えておいたフレーズを簡単に打ち込み、鳴らしながらキーにフィットするようシンセサイズしていきます。「歪ませずにいわゆるぶりぶりベース」を使いたいので、歪んでいると感じさせる要素、つまり倍音配列がおかしくなったり乱れたりしている状態を作るため、シンセ側で工夫します。
今回はSynthEditで自作したシンセを使います。単純波形からシンプルな音色を作りたいとき用に用意してあるものなんですが、最近のバーチャルシンセは色々ゴテゴテ付きすぎていて簡単なものを作るときかえって使い難く感じるんですよね。GUIも凝っているがために何処に何があるか分かり難かったり、パラメータを弄るノブが小さ過ぎたり。
こういうときのためにすぐ触れる位置にNORDLEADを置いてあるのですが、如何せんハードであるばかりに事後処理の不便さがどうしてもつき纏うので、余計な機能は一切省いて自分で使いやすいよう工夫したシンプルなものです。

3osc構成ですので、oscのひとつを基本ラインの1oct下に回して音階感がギリギリ分かるような音を作り、基本線が分かり易いよう中心となる部分はノコギリに、この時点でそれなりに輪郭線は見えますからあとは強調させられるようスクエアとパルスを乗せてみて様子を見ます。ノッチがかかり、張りと胴で勝負する中抜けした音を想定していたので、ここで内蔵フィルタを試してみましたが思ったような効果が得られないので、EQを挟んでミッド切りで対処し、大体いけるかなと思ったところでポルタメメントとフィルタエンベローブ調整していきます。
次にオケとの馴染み調整用にもう一つレイヤーしておく音を作っておきます。馴染みと言えばリバーブをはじめとする空間EFXをかけるわけですが、今回はドライな音にしたいのでその矛盾する部分をレイヤーさせた音色で補います。リバーブと決定的に違うところは音そのものを変えられるところなので、輪郭を出しつつギラギラしたエッジを持たせて元音自体の線が消えないように(今回はVangardのAjaxsawを中心に)且つ元音に似た成分を混ぜて馴染みを作り、リリースは本音色よりも若干長め(リバーブ代用部分ですね)にしておき、この長さの部分は最終的に改めて調整します。

次は5度乗せ音です。ここは音楽的なこともあるのでかなり迷いました。フレーズを鳴らしながら音色やレベル調整をしていった結果、フレーズ面から考えて基本的にはやらない方向の方がいいなと思いました。ただBs兼リードなわけで和音感がかなり乏しくなりますから、そのせいで和音楽器を入れるのもいやなので、2oscで下にデジタルフィルタでジョリジョリ感を出して擬似的にパルスっぽくしたものを潜らせてメイン部分でノッチした箇所に太さの部分を加味するように設定し、上にスクエアを乗せて、この波形に5度の倍音が強調されて出るようにフィルタリングします。こうすることで部分レイヤーするであろうフレーズに5度感があるような無い様な、且つBs自体が太くなるような音が作れました。
この方法で、使い分けをするか片方に絞るかを後で考えられるよう2パターンの音色を組んでおきます。

そろそろベーシックを作らないと始まらないのでドラムを打ってみる事にします。
キックに関しては、丸いけど太い音が欲しかったのでいつもの事前仕込みライブラリを漁って適当なものをピックアップしてみました。ピッチをみてアタック感とリリースをチェックしながらEQ/コンプまで仕込んでおきます。Bsと仕事が被らないことを確認したら次はスネアですね。
今回はワリとミッドにコシがあって太め、ズバーン!とくるものが欲しかったので、レイヤーする方向で行く事にしました。ベースとなるのはリンドラと909とのレイヤーをSP1200に通したローファイな自前音色、もっと輪郭が欲しいので皮のテンション緩めのスナッピーを切った生スネア(音源はBSDです)を作り、それぞれピッチ調整を済ませたら一旦録音、ビットクラッシャーで8bit化してローファイに。それなりにリリースがあっていい感じに汚れました。
ローファイ化したことでハイが出てないので上に乗せるものを幾つか試したのですが、「ズッバーン!」の効果を得るためのテストとしてリバーブをかけつつ同時にコンプして遊んでみたものの思った効果にならないので、ハイ出しがてらにリバーブのかかった音自体をレイヤーした方が早くないかなと思い別の方法をとりました。

これは大学生時代によく使っていた手なんですが、先ず適当なスネア(メインとなる音に似つつも別種の倍音を持っているものがいいです)を選び、深めで太めのリバーブをかけて、フルウェットか2割程度までの原音を混ぜて録音してしまいます。これをサンプラーに並べて同時にトリガーしながら、アタックを原音に譲るように削り、リリースやディケイを調整しながら長さを決めます(調整次第で別倍音を持ったゲートスネアみたいなものが作れちゃいます)。
元々ハイが足りなかった事が発端だったので、その部分をカバーするようEQで調整し、ズバーン効果が強調されるようにコンプ、これをメインのスネアとレイヤーして馴染みを確認。その後の扱いが面倒なので、原音のリバーブ成分と偽リバーブ音を混ぜたものを一度録音し、一つのサンプルにしておきます。これでこの音色を切ればドライに、レイヤーすれば密度の濃いリバーブがかかった音色に変えられるという寸法ですね。
リバーブをかけた状態で位相の調整がてら横に広がりを作っておいたいのでダイナミックで広がりのある独特な音が完成しました。リリース部分はこの先に待っているマスター段階での過剰コンプを想定し、新たに押し込まれて長くなることを計算にいれ、実音のキレ部分を基準に長さを決定、実際に聞えるのはそれよりも若干短くしておきます。地味ですが後々効果の出る大事な作業ですね。

HHはシンプルな方がいいとおもったので3種選択し、いつでも切り替えられるように待機、裏4のパターンとその手前16も打つシェイカー兼用パターンの2種を先に作っておきます。
残りのパーカッションですが、シンプルなパターンを組んで音の調整です。
全体音を太い仕上がりにする際ローミッドの処理をどうするかが結構ポイントになってくるのですが、基本的に切ってしまった方がスッキリ聞える部分なので、逆に考えてあとの判断で出具合を調整出来るようにパーカッションの位置を落としてあえてこの部分を中心に纏めておきます。そうする事でアメリカ製なハウスっぽい独特な太いドラムトラックに仕上げる事が出来ます。

あとは個人的に「ゴミ処理」と読んでいる効果なのですが、適当なループを取り出してきてpHatmatikやIntaktなどの波形を分断処理出来るようなサンプラに放り込み、16や32分に切られた部分を幾つか抽出してリズムの空白部分に埋め込み、擬似的な厚みを出していきます。これが特に効果を発揮するのは過剰コンプをかけた曲やドラムを使うときで、今回はそう言ったサウンドにする事が決まってますから丁寧に処理していきます。元音を過剰ゲート/コンプでシャックリさせてから隙間に埋め込むのも手ですね。

リズム楽器が揃ったところでドラムパターンを3パターンほど打っておきます。一旦全部をキックと同じコンプに仕込んでみて潰し具合と占有帯域を確認しながらBsと混ぜて喧嘩しないかを確認します。この時点でいい感じで馴染んではいたのですが、ドラムがまだ想定していた太さを出せていません。エキスパンダで量感調整もしたのですが、方向性の違う感じになったので、生ドラムの量感処理を応用して対処します。


今回は小技を幾つかお話ししているので、折角ですからこの部分もお話しして置こうかなとおもいます。
僕がやっている生ドラムの飽和調整のやり方なのですが、例えば一旦全楽器のマイク処理(かぶりのEQ処理など)が終わってドラム用バスでコンプ調整した後、それぞれの楽器のauxを別バスに立ち上げます。
キックなどは小さめに(これはただでさえ原音の方のキックの倍音を増やすために卓のゲインで歪ませていることが多いので更にゴチャっとさせ易いからです)、逆にオーバーヘッドなどの全体音が入っているものを大きめに設定し、サチュレーションが起こる程の過剰なコンプをかけます。これにチューブ歪みなどを加えていき、ミッドからローミッドが飽和したような部分を作りながら、最終的にEQでメインのドラムに足りない部分を残して不必要箇所を思いっきりカットしていきます。それでも量感が足りないようならコンプの手前段に初期反射音だけを残したリバーブを入れみたり、マルチバンドコンプを挟んでミッドのエキスパンダを調整するだけでワリと簡単に量感が増えます。

ここで注意すべき点は一つだけで、過剰コンプした事で消えてしまったアタック感なんですね。そのまま混ぜると、「よく分離したメイン音+なんだがゴワーとした物体」にしか聞えないので馴染ませるための処理をするのですが、ここはf特的に調整していくのではなく、トランジェントを操作します。キックの張りの部分はメインの方に残っている事が多いので、強調した上でその下に潜り込ませて「アタック自体に量感がるように」調整します、これはスネアも同じです。HHはむしろ逆で削る方向、リリース部分のみに量感を出してあげます。これには沢山理由があるのですが、一番は定位の問題ですかね。HHである以上なにがしかのPAN処理をしている事が殆どでそれを邪魔しかねないための対策です。原音にショートディレイを仕込んで両側で聞えるようにしたのに、位相の兼ね合いでセンターから消えてしまったり量感が大きく聞えてしまったりで。
位相の話が出ましたが、この状態でまだ馴染みが悪いようならメインパート側の各楽器の位相を反転させたり戻したり、サンプルディレイ的なものを挟んでみたりしながら様子を見ていくと尚良くなると思います。

とこれが自分のセオリーなのですが、今回は生ドラムではないので元音操作は自由自在、処理はラクチンです。量感処理音が出来たらそのBUS音を元音のコンプに参加させてみて、出来上がりです。BUS戻しが面倒だったり扱いが大変なら一度書き出して別波形に纏めておくのもいいですね。


あとは全体的に他の楽器を考えていくと、Bsやボーカル、シーケンスを筆頭に乾いた音に仕上げたい音ばかりでオケが構成されてしまいます。ただでさえコンプを過剰にしてダイナミクスも死にますし、量感とのトレードオフで空間を失います。なのでドラムで出来るだけ空間や奥行きを感じられるようにアンビエンスを調整してし、混ぜた状態である程度空間を感じられるようにします。今回はスネアとパーカッションにこの担当をして貰いました。


全体のアレンジが見えてきたら兎に角必要だと思うフレーズをさっさと打ってしまい、早めに一区切りつけてもう触れないように録音しちゃいます。これはカットで仕掛けを作るのが楽になるためと、それがアレンジの一部分でもあるので、いつでも取り返しがつく状態にしておくとキリがなくなってしまい、どうしても引き返そうとしてしまうので自分に縛りをつけてしまいます。
ドラム、ボーカル、必要なパート数種類と出来上がったので、展開を考えながら並べ、思いついた先からどんどんフィルを作りつつ切れ端パーツを作っていきます。
この際にオーディオ処理が必要なものは作ってしまう、アリモノのサンプルを混ぜる、全体として整理する、という作業も同時進行です。

並べていくうちに全貌が見えてきたのでそれに沿って地味な作業(キメ系の効果音を作ったり、シンバルなどの後付け音追加、ボーカル処理等々)をし、サビベースの後半パート部分も切り貼り編集、で次はギターの録音です。
8級レベルな僕のギターで適当に録音、演奏補修編集、フレーズ化してこれもオーディオに。ハイブリッドにするために、弾くのが面倒だったり弾けないフレーズなどを打ち込みギターで。この辺りで使ったエフェクトはAmpFarmとAmplitubeを使い分けています。


今回はあまりアレンジの話をしてませんが、単純に深く考えたところが無いんですよね(笑 切り貼りと構成決めで勝負したかったのもあるのですが、考えすぎたりアンサンブルが綺麗すぎると漢らしさが損なわれていくので全体としての勢いが死にますし、Bs兼リードを使っているせいで和音感は元々も乏しい事も理由の一つですね。
一つ挙げるとすると、最後の最後で少し出てくる大サビの部分でしょうか。ここは基本的にVI→I→Vの動きなんですが、パワーコードでIII→V→IIを弾いておく事で本来のBs進行を5度で保つようになります。下に回しているためにどちらのラインもベースに聞こえるよう錯覚し、たったこれだけでもう説得力が出ちゃうので、これがバンドサウンドギターの面白いところですねえ。


という感じで今回は終了です。musieには2番部分に当たるところしか上がっていませんが、大体の感じは分かって頂けると思います。フルサイズで聞かれる機会がありましたら、ガンガン変化しながらジワジワとアガっていく感覚を楽しんで貰えたらなあと思います。

今回はmusieに暫定バージョンをアップしました、「freedom」のお話です。

先にもお伝えしましたが、reasonのハウスバージョンを作るに当たって元々ディスコファンク調だったものをリメイクした理由の一つはその方がエイベックスさん向きだなと判断したからなのですが、どうせこの方向性でいくならfreedomの方が向いてるなあ、と感じたのも一つの理由でした。

先ずはいつものようにVoをメロダインでグリグリしてみて大体こんな感じかなと纏まったところで、頭の中で聞こえてきた和声感と曲全体が持つリズムに従ってアレンジし、同時に存在しないコーラスの追加パートをこの時点でねつ造しておきます。
15年、20年前に流行ったジャンジャンピアノが今更リバイバル的に流行ってるようなので、どうやって自分の曲に取り入れようか、この1年近くかなり考えてみましたが、今回一つの答えが出た気がします。

このジャンジャガピアノさん、結構侮れません。基本的にトライアドか7th程度を加味してシンプルでベタな和音構成を保ちながらリズミカルなフレーズにするわけですが、ベタベタにやってしまうとバカっぽくなるので自分的には当時やり過ぎたせいもあって食傷気味といいますか、あんまり好きじゃないんですよね。
じゃあどうするのかという話になるんですけど、あんまり弾きすぎると「ソレ」にならないし、ボイシングをガチガチに固めてしまうとそれだけで音楽的にオケが成立してしまって他の楽器が入る猶予がなくなるので、やり過ぎず加減しすぎずというさじ加減が必要になってきます。
こういったフレーズのルーツを考えると、ファンクやソウルの2音カッティングギターのリフをベースとして生まれたものでしょうから、例えばトップが歌いすぎるのもソレっぽくないので、トップラインでカウンターを仕掛けたくない場合は動きを基本2~3音程度に納めて内声を一定と見せかけて下を踊らせるように動かせると活き活きしてきます。5度→4度(11)→5度や、3声→4声と移り変わる、最低音をBsをくぐらせてテンションを出す、などなどトップラインに合わせたブラスアレンジをする感覚、というと分かり易いかもしれません。

音色ですが、ざっとしたところはreasonの記事を参照して頂いて、それに似た構成になっています。こういうピアノはなんといってもM1ですよね、チープさとハイの独特な響き、詰まったようで位相感の緩いミッドが綺麗に出るので馴染みもいいです。自分でも2009年になってまでまさかM1ピアノを使う事になるなんて想像もしなかったですね(笑 「流行のループ」って恐ろしいです。
弦や管に関してもreasonと同じ感じに仕上げました。ただブラス感を強調したかったので管に関しては少し金属の軋みを強調する仕上げに。

逆に大きく違うのはベースですかね。
今回はソウルフルなグルーヴ感も感じて欲しいと思っていたので、その趣旨に沿って考えるとBsは真面目に全部弾かないと駄目だなと思い、イントロなど繰り返す事がかえって効果的だと思う部分以外はループフレーズにせずに全部弾きました。音色的にもAmpサウンドはブレンド程度でライン録りのニュアンスを出し、エッジがよく見えてフレーズがある程度活きるように考えました。こんな複雑なフレーズをスラスラ弾けるほど上手なわけはないので、一部だけは切り貼りな生なのですが(どこか分かりますでしょうか)気合いで打ちを込みします。裏8分とかズンタタな裏16octベースにすると楽なんですけどね、芸がないし趣旨も違うので却下ですね。クッていい箇所やシンコペーションが大事なタイミング、特にレガートさせるところをはじめデュレーションなどを慎重に確認しながらフレーズが遊べる自由感のあるフレーズを考えていきます。かなり面倒で時間も掛かる作業ですが、ここは「どうせ誰も聴いていない」という部分にはあたらない重要な箇所かと思うので地味にちゃんと効果は出てるかと思います。
音に関しては打ち込みパートと生パートの整合性を図ってバレ無いよう音色を似させる所から始め、キックの音色との兼ね合いを見ながらロー処理をしていきます。音長にも影響し、ひいてはグルーヴに関わる事なので、キックのブームの長さとベースのフレーズが崩れないようにコンプ・ゲートをこの時点で処理して決めおきします。
少しだけ悩まされたのは、弦の振動によって倍音配列の音量が狂ってしまい、EQコンプ処理すると音質の方にも影響が出るので、あまりに酷い箇所は実際に自分が聞こえるトーンになるよう倍音の大きいところを基準に音階変更やピッチベンドでリチューンしました。単純な平均律・純正律のチューニングやローインターバルリミットなんかもそうですが、こういうのはわざと響きを作るための技として使う場合はいい武器になりますが、ただ邪魔なだけの存在になると回避策がいきなりグッと制限されて逃げ道も少なく高度になるしで、かなり厄介な存在ですねぇ。

キックに関してはこういった曲はローが太く、アタックのエッジが効いてれば事を成すタイプの曲なので、僕の好きな胴の部分はいつもより相当削って作ってあります。こうする事で管のブホーと唸る部分やBsの胴をキープしてもそれなりに効果があり、またお互いにいい感じにマスキングしあって相殺され、無駄なEQ処理をせずに済むからです。同じ様にこの空間にボーカルの腰の部分を放り込めるので、Voの野太い部分も削らずに済み、声の位置を落とせると言う長所もあります。こう考えていくとメリットは多いですよね。


先ずはサビが響いてこないとだめなので、アレンジはサビから始めます。正直に言うと先行のデモが必要な局面があり、そのためでもあったのですが(笑 そういったオトナの事情はさておき、先ずはリズムとボイシング、フレージングの整理からですね。
ファンクやディスコ調を強調しすぎると16感とその引っかかりが強くなりすぎて走らないし、かといって崩し過ぎるとファンクにならない。でもサビである以上もっと流れてスピード感も欲しいのでエイトや速度感のあるシンコペーションは混ぜたい。そこでいつもの役割分担&ブレンド作戦で乗り切ります。

先ずはキックですね。4つ並べて8か16回に一度8分や裏16分のタイミングなお約束ノリでもいいんですが、リズムのかなりの部分をキックで強調されてしまうのでいわゆる4つ打ちにすると流れすぎて僕が今回欲しい感じになりません。そこで4つの流れが最低限保たれている状態をキープし、4つ打ちに反抗する形で考えていきます。キモ分は「and now I'm~」のアーフタクト部分とその後どうするかですよね。ここを4分で強調した後ただドンとサビが始めるのは何か違うので、ここは偉大な先人の黒人の方々の大いなる知恵を拝借してファンクの16感をその後に強調出来るよう8分タイミングを強調してから、ディスコによくある「裏2つクラップ」が拍ズレした感覚で、そしてその帳尻合わせをし、結果2拍食ったように見せかけます。一度感覚で一回り分全部手弾きしてから微調整し、裏拍も使っている事で基本となるシャッフル感も左右されるため、タイミング関連はこの時点で合わせて考えてしまいます。
あとはパーカッションで8感を出してバランスを考えるんですが、ただ流れるだけでは面白くないので、HHCやシェイカー特にボンゴコンガなどは16ファンクの基礎タイミングである弱拍と更にその弱拍、裏と裏々ですね、色々注意しながらベーシックリズムを作ります。

残った大事な楽器としては管のパートですね。ここはディスコティックに纏めたいので上記の調整部分で少し走るようになるくらいにしておくことで管パートは若干引っかかりを作っても全体としてそれなりに流れます。
このタイミングが大切だなと思うパートを先に打って様子を見ながら他の部分を考えて隙間を埋めていきます。主張しすぎてもだめだし、かといって頭では鳴っていたポイントとなるカウンターのフレーズは残したいので、これは音色で調整するのではなく、フレーズとして音楽的に調整します。エンディング部分の弦に関してはVo(主旋律)が無いのでやりたい放題ですから、切なさが少し感じられるような元気ラインを。
ここまでざっとうまくいったので残すはA/Bメロです。


ここは苦労はした記憶もないのでざっと纏めますが、とりあえずAフレーズx2というような構成のメロなので一周目と二周目のアレンジを変えて変化をつければA→Bに移ったかのような役割だけは果たせるかなと思いました。
序盤フレーズってのはセカンドコードで提示者の雰囲気が決まると思ってまして、ファーストコードで「先ずこういう風に始まるんですよ」と提示し、聴いてる側は「ほうほう」となり、「で、次はどう出るつもりなの?」と思われているところに「これがさ、こう雰囲気でグッとこう来るカンジなんだよ」と序盤の方向性を提示するところだと思ってます。はい、抽象的過ぎて全然分からないですね、僕もそう思います(笑
とりあえずその概要だけ分かって頂いたと仮定して、例えば先ほど「2周目で変化を出したい」と言いましたがここでそれを発揮させるため、今回はVIm7からのVm7な動きを使ってブラック感と黒人音楽独特の情緒感をもって曲に入っていけるよう誘導します。第一転回の5抜きにしておくことでVImの際の3度から動くラインを作れるので7thにあたるメロにしても濁って聞こえないし、BsがVI→V、すぐ上に乗ってる内声の動きがI→VI♭となるので短3度間をキープして落ちる事で移調したか借用使ったかというオドカシの感じをちゃんと出しつつも綺麗なラインが組めます。ついでにVImも7addして一回下に回してルートを抜いた形にしておくと、V→Vと安定した動きを(動かない)混ぜられるので更に気持ちいいですね。
別に大層な事はしてないわけですが、地味に曲の印象に響くところだと思うので丁寧に考えたいところですね。
他に気を遣った部分としてはフィルインですかね。ここはブラック感を強調出来るチャンスでもありますから、生ドラムでならどうするかをベースに考えました。


そろそろ構成決めしないと先に進めないところまできました。ここでソロ転向した事がかなり影響を及ぼします。
タイスケと組んでいた時は構成決めをする際に「こうきて、こうきてこうだな、でもここはどうせこうして欲しいと言われるだろうしやめておくか・・・」という部分が確実にありました。それ自体はどっちでもいい事なのですが、好き勝手な構成にする事で別のアイディアが連動して浮かんできます。
例えば2番のA/Bメロからサビに行く際の展開を考えていくと「ここはもっと引き延ばしたいな」と思いました。色んなパターンを考えますが、先ずはオケ抜きで一旦ブレイクとして落としてサビのフレーズを歌わせようと言う事にしました。
Bの繰り返しの部分ですが間が持たないので色々工夫してみると「ここはちょっと控えめなソロとか入れちゃおうっかなあ」という、今までだと多分禁止されたであろう発想に変わります。そしてブレイクのあとサビにどうやって戻るかを考えるとタメを作ってドンというのがいつものパターンなのですが、ここにタメっぽいものは欲しいものの、それに相反して行ききってしまう勢いも欲しくなります。これも多分今までなら却下されちゃったでしょうね。
そこでオケ/ボイスカットと多少のグリッチも混ぜてやろうとかいう発想に結びつきます。(これはボーカルだけ切りだししてアリモノの切り貼り編集で済ませました)
でも流して聞いてみて、もし自分がDJをしていたらと考えるとサッパリしすぎている気がしました。タメはタメでもブレイクやキックフィルのような形ではなく、かといってサビ繰り返しではないタイプでサビに行く前の長尺な前段になるようなもの、且つ別のノリ方をみせられる方法(同じノリだとサビに戻ったときにインパクトが薄れるため)はどんなのかと考えたとき、先ほどのソロの発想がまた戻ってきました。

趣旨の一つとして生感を出したかったわけでやらない手はないとVoなど数パートを消し、遊べるように基本をスリーコードになるようBsだけ残してコード感は出来るだけ排除、ノンクオンタイズで何度か弾いてみて気に入った部分をざっと編集して終わりという相当大雑把な方法で直感的な部分がちゃんと残るようにしてみました。それ以前にノリノリで弾いてて楽しかったです、それも大事な事ですよね。
これで「サビに行くと見せかけて別の展開ですよ」という裏切リ感も演出し、もう一度別のパターンで連打のカットフィルを使う事で継続感の勢いも出せました。あとはVoのカット処理やスピンダウンなど効果音的な部分を編集して終わりです。
結果ここは自分的に曲としての印象的な部分を一つ追加出来たと思うので、そういった意味でもやって良かったなと感じると同時に、発想ってのは色んな事が影響するんだなと改めて感じました。


今回はざっとこんな感じでしたが如何だったでしょうか。まだまだ説明しきれない小細工なども沢山盛り込んでますので、どう言った形でこの曲を発表出来るか分かりませんが(どうせまだ手直しすると思いますし)何度も聴いて貰える、その度に発見があって、より入っていける曲になれば嬉しいです。

と、ここからが追加分です。
読み返すと今回解散に至った序章が見え隠れしている気がしました(笑
彼はきっと「なんだか漠然とした自分名義の曲」ってのを人に作って貰ってそれを自分の思うように修正を加えたかっただけ、僕の方は「曲は自分が書いているのだし、あくまで自分の領分」という考えで、この部分がぶつかってたんでしょうかね。

その後大きな変化を生むキッカケなんですが、その1版を渡してハコでかかっているところを聴きに行ったんですが、想像以上にグシャーっとしていて何が何だか分からない感じになっていたのが一つ。もう一つは次回作の「freedom」を作るにあたり、ブラックやファンク色を出そうとした際にこちらの曲方が頭の中で整理が出来てるなと思った事が一つ。
両方を合わせて考えると、今の段階ならreasonを大幅に変更しても取り返しがつく。違う雰囲気にしておけば差別化も図れる。今の状態だと誰も満足しない、やり直そう。そういう経緯でやり直す事にしました。

ここで選択肢が生まれるわけですが、元々僕が良いと思ったもっともっとシンプルなバージョンに直す、前のはいっそ無かったことにして全アレンジやり直す、って事ですね。で修正作業というのは非常に気が重いものですから(いや本当に!)いっそやり直す事にしました。
先ずはパート消しです、9割は消してしまいました。これくらいの勢いでないと経験上前の名残が邪魔してしまって袋小路にハマっちゃっていい事ないんですよね、なのでここは思い切ってバッサリと。
新しい方向性を3パターンくらい考えたのですが、雰囲気を変えるなら黒さはもう殆ど要らないなと思いました。もっと日本人向けと言いますか、さわやかさや元気感、明るさ、JPOPを思わせるようなものがもっとあってもいいかなと。

ピアノは高尚過ぎないないように、ポップス且つ簡単なフレーズのビートバラードを弾くかのように。ベースはファンクである必要がなくなったのでベーシックリズムを中心としたシンプルなラインに変更。弦か管どちらかだけでいいなと思っていたのでフレーズで遊びやすい弦を選択、和音感補助且つメロディアスで印象的なカウンターラインを意識して。
大まかな構成が前回のものを踏襲した形にして微調整し、全体のノリが決まってきたところでリズム(主にパーカッションパートですね)全部を打ち直しで曲全体の歯車を噛み合わせる作業に。

音色に関してもジャンジャン弾きで無くなったことからピアノは音色自体を変更。綺麗且つそれなりに立つピアノってなかなかないですよね。とりあえず今回はGigaのライブラリからべーゼンを痩せた形にして使用しました。
弦は前回のものを。楽器数が減ったことでEQでレンジ調整していた部分をもう少し広げてあげました。単品で立つ場面があるとある程度の胴鳴りが必要ですし、輪郭もVoとピアノがあるので喧嘩しない箇所を見つけて譲り合いする方向で。
キックも締まってる理由が無くなったので音色ごと変更し、もっとブーミーでローがしっかり出てるものに変更。これに伴ってベースも少し下げた位置に。ブーム感のサイン波を中心に、腰の部分をEQで部分切り出ししたものと輪郭用を2つのノコギリで。キックとの馴染みが必要で、曲調からもフレーズからもそんなに目立った感じにしなくてもいいので、キックと一緒にコンプ、チェインを利用して多少はダックをつけながら。パーカッションもサビ以外はそんなに大事ではないので(楽器が少なく、勝手に出てくるので)空いてるところに潜り込ませる感じで。
基本パーツが揃ってくると最後は微調整をするのですが今回はこの部分を省き、あとで説明しますがかなり大雑把な状態で放置状態にしておきます。

楽器がぐっと減ったことでミックスが3倍ラクになりましたが、ここで少し実験的にミックスは適当なままの状態で、マスターでEQとコンプでいじくり倒してバランスを整える方向で。
丁寧にミックスしていくとI want Uの最初のハウスバージョンのように楽器が各々クッキリした分厚い感じになるんですが、やり過ぎると上品になっていき、リスニングには良くても「ダンスミュージックっぽさ」が欠落していきかねないので、両極端な方向としてこういう強引さも必要かなと、加減気味ではありますが実験的にやってみました。
結果は、んーどうですかね、自分でもこれで良かったのか元来どおりの方向の方が良かったのか、正直よく分りませんが(笑 どっちもどっちといったところでしょうか(?)。今回経験した事を次回作で更に少し応用してみたいとは考えてます。

ここまで出来上がったものを一旦聴かせたところ、「完全に別物っすね(笑」とは言われたものの、サビ後半の盛り上がりなど新しい要素が勝ったようで、そのまま仕上げて渡したのですが、そこから先は例の諸々があった事でもう僕のやりたいようにやってよくなりましたので(笑 ちょっと気に入らなかった部分を元に戻したり修正を加えての完成です。
曲の方はもうmusieに上げてありますので、あとは反映待ちですね。二転三転しましたが結果こうなりました、良かったら聴いてみて下さい。

次の曲も今週中に仕上げちゃいますのでお楽しみに!

今までにイヤと言うほど書いてますからもうおわかりでしょうが、もう何一つ弄る事が出来ない段階まで来ています。どれかを上げると全体のリズムが狂って聞こえる。例えば管を上げてしまうと頭打ちフレーズが強調されてモントゥーソっぽい4拍強調の止まったリズムになり、ボーカルもピアノも死んでいく。フレーズとしても弦と絡ませるためにあまり出しゃばらない感じになっているのに、抜き差しのフレーズも死んでしまう。音質面での強調ももう役割分担がガチガチに決まっているので今更変更出来ない。それらを一応説明し、仮に弄ったものを聴いて貰ったんですが、やはり駄目でした。

今度は「折角の弦が聞こえない」という話に。上記と同じ理由で何も触れない。
どんなことになるのか、試しにストリングスとブラセクとピアノをバスに振って全体を持ち上げてみたのですが「これでいいじゃないですか!」と言われてしまいました。どう聴いても4/8/16のバランスが完全に死んで、4つノリベースでかすかに8でノレるか、って感じになっています。タイミング的にで4ノリするトライバルなものが彼のマイブームだったので理由は分かってるんですが(笑 メロの持つリズムを考えても今回はナシなので。
DJなのでリズムからなら理解して貰えるかなと、それぞれ関係性を実際に聴いて貰うために他の楽器の抜き差しの状態も聴いて貰いましたが、どんどん泥沼になるだけです。最後には「ボーカルなんか聞こえなくてもいいので弦を大きくして下さい」って事に。

彼はこれでいいというのですが、どこでノリたい、どの楽器をよりよく聴きたいなんて結局好みの問題でしかないですが、例えば16を廃して4や8でノる曲にするのなら別のアレンジがあったわけで、例えば弦のラインを強調したいなら管は廃止、それに伴って管との抜き差しのラインを全変更、ボイシングの見直し、ピアノも極小でリズム隊のパーカッションの役割に(グラビのリフみたいな方向性)、といったように一つ弄る事で全部変えなくてはいけなくなる。
幾ら話し合っても「俺はこの弄った方が好き」対「意図が崩れるのでいっそやり直した方がマシ」という水掛論にしかならないし、音楽に正解などないですから長い間話し合っても結局はなんか変な空気になるだけで。
少なくとも僕の主張としては、「注文は全部どうにか全部叶えるように押し込んだ」わけだし、もう2000曲くらいは書いてきているので、何をどうしたら結果どうなるか(例えばこのラインは好きなので強調するとえてして五月蠅いだけになる、など)という経験則があるわけで、意見が分かれたのならこのままそっとしておいて欲しかったんですが、「どうも腑に落ちない」と。

思い出して貰いたいのですが、最初に聴いたときに興奮気味に気に入っていたわけです。ところが最終の好み通りにパートを抜き差ししたらどうなるか、などを丁寧に話していくウチに弄ったら弄っただけやっぱりこっちがいい、いやこっちの方がいいかなあ、となっていったわけです。普段はそんな事はしないのですが、珍しく「どうなるか一回やってみよっか?」といろいろ聞かせたのが失敗の始まりでした。
何が言いたいかと言いますと、何か物作りを経験されている方ならいつも経験されてるかと思いますが、自分が手がけている作品っていうものは修正を加えれば加えるほど良くなっていくという錯覚が起きやすい。それに惑わされたり流されたりしないように引いた目で冷静に判断する要素は、もう数だけがものを言うのだと思います。10枚の絵を描いた人よりも1000枚書いた人の方がその判断力に数に裏打ちされた一般性(?)のようなものが付加されていくと考えます。その場その場で限りなく広がっていく選択肢がプラスになったか、実はマイナス方向なのか、それを判断する視点ですね。

ただ上にも書いたようにロジカルには彼の言い分もよく分るのです。何か一つのことを極めようと努力したことのある人にしか、そこに至るまでどれだけの考えや経験や知識や時間、、、そういったものが積み上がって出た結論と結果なのか、なんて分かるものではないですよね。一見白紙に線が一本だけ書いてある絵でも、その線の角度や使った画材や色、少し変わるだけで意味が違うものになる。ハタからみれば「え、だって線引き直すだけでしょ?(笑」そうなるのも不思議じゃありません。人それぞれに好みがあり、またその人の別の正解があって、線を書いた画家にも自分なりの主観の正解と意味がある。どちらが良くみられやすいか、多くに評価されるのか、それは結果論でしか語れないのでやはり正解はなく、どちらを取り入れるか決められるのは書いた本人だけじゃないかなと。
僕ら二人の関係に置いても、例えば独断で作った僕の完全主導なもの、「L.S.D.」に「Listen~」、最近では「I want U」のエレクトロ版、彼主導の「Heaven is a~」など、ちゃんと結果としてどういう評価になるかの前例がある筈なので、分って貰えなかったのはかなり残念でした。
反対に明らかに彼の注文修正で評価が上がった「Let Me Go」という曲もちゃんとあるので、勿論全てにおいて僕の判断が正しいわけではないです。

人と一緒にものを作り、しかも作業自体は一人でやるというのは今まで思っていた以上に難しいなあ、と感じた一日でした。DJと組む場合、トラックメーカーは製品を、DJは営業を、という分担だと思っているのですが、営業が商品に惚れてくれないと売れるものも売れなくなると同時に、営業はお客様の注文を開発に上げてくれるのは大事ですが、開発のことも尊重して意見して欲しいなあと。結局は信頼関係なんですかね。
生きていると似たようなこと、他でも感じませんか。

折角トランスから抜け出して少しはやりたい方向の音楽が出来るのかなと期待してたんですが、ここでも「営業書き」といいますか、普通の仕事のようにクライアントの注文通りなものを作るだけだったらちょっとがっかりだなあと思う今日この頃です。
本当に作りたいものは趣味に留めておくべきですね。

で、結果どうなったかと言いますと、彼の注文を尊重してみました。皆さんの反応をみてこれが正解だったかを見届けたいと思います。

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作曲、プロデュースからエンジニアリングまで、曲が出来るまでの全ての工程をなんとなくそしてぼんやりとこなす人。ジャンルはポップス、ロックからダンスミュージックまでなんでもやります。最近はすっかりハウスの活動が中心になってマス。
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