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今年最後のトランスになると思います、新曲「HARDSTYLE REVOLUTION」をミュージーにアップさせて貰いました。
今回のコンセプトはハードコアやハードダンスとエピックが融合され、行き来するようなちょっと無いようなスタイルの曲を、というものでした。ではいつものように苦労話(笑)と製作工程を。
曲の方は結構前に書き溜めてあったんですが、まだアレンジとサウンド傾向の部分でイメージが固まっていなかったため保留にしてある一曲でした。
一番悩んだのは構成で、「普通にハードから入って気が付いたら分かり易いダッチトランスになってた」という部分で何をキッカケにどういう風にすればこのミスマッチングな組み合わせが自然になるのか、という事が一つ。
もう一つはサウンド傾向で、ハード系はアグレッシブでミッドが中抜けしたようなタイトなサウンド、対して日本でエピックと分類されるダッチトランスやハイエナジートランスはもっとオケ自体が太くて音がてんこ盛りという部分。僕の曲でいうと、例えばXtoCと先日の新しいリミックス版のLET~が同居する事になります。
先ず今回どうしても達成したかったのはトータルコンプで相当潰してもちゃんと空間のあるサウンド。凄く端的に言えば空間系EFXをたんまり使ってもちゃんと音が立つオケである事。そしてこの縛りが思いがけず切り口となりました。
デモではいつもの「オトナの事情」により肝心な部分が殆んどカットされていてなんの話か分かりようもないでしょうが・・・(フル版が手に入った方は是非聴いてみて下さい)、イントロから始まるドイツ系のハードダンスパートに思いっきり空間処理を施して「あの感じ」を残すにはレイヴ系(オールドスクールなタイプ)のαJuno系フーバーオケヒットしかないかなと思いました。作った音があまりにインパクトが強いため最初はキメの脅かし程度に使ってたんですが、色々調整してハードコアなフレーズとして使えるように工夫をしてみました。
ここで硬派なドイツハードダンス~ジュリテクよろしく懐かしのハードコアな雰囲気に雪崩れ込んだところで(笑)すかさず抜きさしでエピックのエッセンスを混ぜていきます。少々やりすぎたかなと思う部分もありますが、最近はAメロに当たる部分は導入部の雰囲気作りだとワリ切ってるのでメロがしっかりしてる必要性をあまり感じないため、趣旨が合ってれば大体でいいと思うようになりました。ここでは基本16ビートなのですが、頭打ちフレーズのテラーヒットが入るので、ハットや踊り狂うバッキングパートで16を、テラーヒットのフレーズに耳を持っていくと8を中心に聴けるようになっています。
さて、ここからが第2関門です。
Aパートでエピック感が勝ってしまってますからこのヌケでハードのエッセンスを一端前置きで感じておかないとバランスが取れないので思い切って2小節使って脅かしのブレイクからサイレントブレイクにしてそれっぽいボイスからの導入を。この間緊張感を煽るのと空白を少しだけ埋めるのにサイレン的な意味合いの音を混ぜてヌケの準備完了。
「HARDSTYLE!」というボイスからリズムになる音があったので流用させて貰う。このリズムはこの先想定してるサビフレーズを抜き差ししたブレイクフレーズに適さないと判断したので303系の音で少しポリリズム的にクロスオーバーしてクロスフェード処理を。
ここからテーマが混ざってくるんですが、一部を何度か聴かせては消え、というパターンはもう飽きたので(笑)フィルタリングしながら出来るだけ聴かせない方向に。こうすることで次に入ってくる繋ぎのボイスが聞き取り易く出来て一石二鳥です。
ここで使うボイスは飛行機のフライトアナウンスです。「皆様にお知らせがあります。離陸準備が整いましたので煙草の火をお消し頂いてシートベルトをお締めください」という台詞でサビまでを煽ります。
本当はここで一気にサビに行きたいのですが、ここは日本流で「ここでいくとみせかけて一回タメて行かないの法則」(笑)に合わせまして間をボイスで埋めます。散々煽ったフレーズはフィルタで一端大人しくさせ、キックバングをキッカケにボイスがきて、ピッチエンベロープをかけたダブサウンドで上昇音、サビに入るタイミングが分からないとDJがパフォーマンス出来ないので(笑)ディストーションキックを4つ鳴らして、アウフタクト気味なフレーズに聴こえさせるようにフィルタを一瞬手前で戻してサビが開始。
サビは下からゆっくり上がって行く上昇系のベーシックフレーズを考えてたんですが、色々悩んだ末玉数の多いフレーズに決めました。最近はゆったりしたメロディアスなフレーズが流行ってるみたいなので、ここはあえて反抗的に挑戦です。
連打フレーズといえばアルペジオですが、耳の肥えた方なら「僕のアルペジオフレーズは少し違和感がある」とそろそろお気付きかもしれませんが、基本的に大事なArpフレーズは全部手で打ってます。アルペジオ機能は便利で面白いですが、一瞬突きたい内声がアルペジオ周期と合わなくて上手に突いてくれなかったり微妙な玉の変更タイミング調整なんかで僕からすると逆に面倒くさい事になるので、基本フレーズを打ってから気に入らない箇所とリズムのシャッフル具合などを任意に修正し、基本的なバス・内声・トップリードと横のラインに分けて音を拾いながらそれぞれのラインがちゃんと機能してるか確認します。
バスパートは基本的にベースの役割ですが、ベースは別にちゃんとあるわけで一瞬2本目の内声の役割に変身する事も可能なのでそのパートパートによって和音構成で肉厚の足りないところや要らないところを縫うように配置。トップは言わばメロですからそのままで、その二つを縫いつつ邪魔にならないフレーズを考えてからもう一度見直してそれらがポリリズムとして機能するようにチェックしていきます。ベースパートは8裏を突くBsが別にあるのでシンコペーションでは少々突込み気味でもなんとかスピード感を保てますし、メロはスキッピング気味に走ってないと速度が死にます。これら鉄則を守ればとりあえず当たり障りの無いものは作れますので(笑)大体出来たら次は音です。
音に関しての詳しい事は次回書こうと思うので今回は簡潔に書きますが、このアルペジオフレーズを作る際にどこを切るかがかなりポイントになります。Arpフレーズを作った事のある方は経験があると思いますが、音としてローをHPFなどで切るのは細くなってイヤだが、Arpにしたときに下のパートがベースと被ったりコンプの関係上音がデカくなりすぎたりして意図通りに行かないことがあります。自力アルペジオの利点はここにもありまして、例えば一番下を突くパートだけ全部抜き取って別の音に差し替えるなんて事も出来ますし、レイヤーしているなら同じリズムをキープしながら特定音だけ鳴らないようにする事も出来ます。今回のリードはゼータを中心に3レイヤーされた音ですが、音の調整はこの抜き差しで行きます。
リードとしての音はノコギリ、どちらかと言えばスーパーソー気味なギュインギュインした音で行きたいのでベーシックな音を作ります。こういう音はエッジが立ちますが、ローミッドの太さが足りないのでもっと胴のある重心の低いを作ってレイヤーし、調整していきます。輪郭を強調するのに丸みのエッセンスが無いと痛いだけなのでスクエアを中心とした音を重ねていくんですが、これはローがハッキリ聴こえて主張し過ぎるためにこの部分は音楽的に処理していきます。
トップが意図通りに鳴る様音を作った結果Pro53に差し替える事になりました。ミッドの胴部分に注目すると太さはあるのでこのままにし、ローがとんでもない塊になり、引っかかりを作ったフレーズが目立ちすぎて曲の速度感が失われ、Bsとも被ってブンブン言ってますので先ずは下では目立ちにくいノコギリを残してスクエア成分を全部カットしてみます。音符的に聴こえはいいのですが、まだブンブンと主張してますので、ノコギリ成分の音色のローの部分だけベロシティを下げ、少しだけEQでHPFとシェルビングして全体のレベルを揃えます。ここまできてトータルコンプされた音を聴くと今度はリードが立ち過ぎているので、どこがでしゃばってるのか聴いてみます。やはりスクエアが主張しすぎているのでトップだけベロシティを下げます。この時点でリードが意図通り、ミッドも肉厚がある、ローはベースと被ってない、という音が完成します。
これまでに色々と解説してきて凄く今更ですが、音を作るときは「シンセサイズ・音響・音符」が三位一体のものとして考えると簡単です。音色そのものも音の倍音の塊、つまり和音の塊ですし、音響的にカットや強調をしていく方法とそれらを音楽的に解釈していく方法など様々です。Bsが太くなかったら音楽的に邪魔にならない上5度に別のオシレータでこっそり被せてみる、別の音色で5度を足す、キックがキールートにチューンされていたらBsと被ることが多いわけでその倍音をEQで削ってやるなどなど、こういう考え方ですね。
話は戻りましてサビから2ヌケです。1ヌケでハードな導入を使いましたから、この部分でバランスを取らないとまた印象が偏ってしまいます。折角オケヒ的なテラーヒットがあるのでこれを利用してハード系お約束の3連フレーズで攻めてみます。
ここでの醍醐味はリズムが変わることとでアップダウンを楽しむ良さだと思います。ハードコア的なフレーズが出来たら抜き差しを慎重に考え、徐々に漢らしくなるように調整。鬼シャッフルさせたクラップを3連と重ねる事で3連のシャッフル感が出ますから(4拍6連とのマッチング/ミスマッチングですね)これを利用してまだ足りない部分をハットで縫ったり強調したりしてうねりを出していきます。
このまま何事も無かったかのようにサビに戻すのは不自然すぎますから、テラーヒットの名残が残るようにして拍頭を強調して誤魔化します。ドサクサに紛れてArpフレーズを下からフィルタで開いて連打フレーズ。またすぐ行くと怒られるので(笑)転換を誤魔化すためにも間を入れてサビに戻します。
1サビより盛り上がらないといけないので音符的な部分ではなくリズムを工夫してみました。1サビでは8小節ごとに区切りとしてのフィルインを少し強調気味にしてあるので、これを気付かれない程度に「行きっぱなし」にしてスピード感を損なわないように、そのまま流れるように作っておきます。これくらいしても2度目に聴くサビなので同じくらいの勢いに聴こえる筈です。耳とか印象って不思議ですね。
今回はこの辺で。次回はこの曲の音色について。
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